酸いも甘いも

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俺もそう呼ばれるように頑張るけど、何年かかるか分からない。 もしかしたら、一生かけても無理かもしれない。 でも俺はどれだけ時間がかかっても、もう諦めるのだけはやめた。 だから、待っててくれとは言わない。 お前はお前の思う人生を歩んで欲しい。」 話を聞いていくうちに、拓哉がパティシエを目指しているのが分かった。 その夢がどれだけ険しい道なのか分からなかったが、拓哉にはそれをやりとげられると美恵子にはそう思えた。 「分かった。」 美恵子の返事に、それを望んでいたはずの拓哉の顔が少し沈んだように見えた。 「あぁ。」 拓哉は一言漏らすと、ベンチから立ち上がり、「今までありがとな。」と言うと立ち去ろうとした。 その拓哉の服の裾を美恵子が掴んだ。 「どこ行くの? 私が分かったって言ったのは、あなたの夢が何なのかが分かったってこと。 あなたの夢を言い訳にしないで、それでも私と別れたいのなら、もう何も言うことはないわ。 けどね、出来ることなら私にもその夢を一緒に見させてほしい。 私自身はこれっていう夢は全然思い付かないけど、夢を追いかける人をみていると、それがまるで私の夢でもあるように思えるの。 だから、待たせてよ。 こんなわがまま、迷惑かな。」     
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