1人が本棚に入れています
本棚に追加
拓哉は一瞬とまどったように見えたが、フッと笑うと裾を握る美恵子の手を掴み体に引き寄せた。
美恵子の顔は拓哉の胸の中で包み込まれ、自分と拓哉の鼓動が次第に合わさるのを感じていた。
「たくよ。
俺以上にわがままなんだよお前は。
俺の夢を一緒に見て、それを待つって、欲張りすぎだろ。
でも、全然迷惑なんかじゃないぜ。
むしろ、俺の方こそ迷惑かけて悪いな。
卒業まであと少しだけど、それまではこうやってずっと側にいてやるから。」
拓哉の言葉聞くなか、美恵子は亡くなった主人のことを想った。
"お父さん、ごめんなさいね。
あなたの言う通り、私は最後の人生を少し楽しませてもらうわ。
今の私って悪い女かしら。
でも、許して。
きっとこんな経験は二度と出来ないと思うから。
今日から私は変わる。
あなたしか知らない私は、もういなくなります。"
これからどう歩めば分からなかった美恵子の新たな歩みが、拓哉の胸の中で決まった。
それから二人は拓哉の家に向かい、愛を確かめた。
激しく、そして情熱的な時間は夢の中でみる、まさに夢のような時間だった。
ほどなくして夜も更け拓哉は眠りにつく。
拓哉の寝顔を撫でる美恵子。
その枕元に見覚えのある本があった。
手に取るとそれはあの青色の本だった。
最初のコメントを投稿しよう!