酸いも甘いも

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拓哉は一瞬とまどったように見えたが、フッと笑うと裾を握る美恵子の手を掴み体に引き寄せた。 美恵子の顔は拓哉の胸の中で包み込まれ、自分と拓哉の鼓動が次第に合わさるのを感じていた。 「たくよ。 俺以上にわがままなんだよお前は。 俺の夢を一緒に見て、それを待つって、欲張りすぎだろ。 でも、全然迷惑なんかじゃないぜ。 むしろ、俺の方こそ迷惑かけて悪いな。 卒業まであと少しだけど、それまではこうやってずっと側にいてやるから。」 拓哉の言葉聞くなか、美恵子は亡くなった主人のことを想った。 "お父さん、ごめんなさいね。 あなたの言う通り、私は最後の人生を少し楽しませてもらうわ。 今の私って悪い女かしら。 でも、許して。 きっとこんな経験は二度と出来ないと思うから。 今日から私は変わる。 あなたしか知らない私は、もういなくなります。" これからどう歩めば分からなかった美恵子の新たな歩みが、拓哉の胸の中で決まった。 それから二人は拓哉の家に向かい、愛を確かめた。 激しく、そして情熱的な時間は夢の中でみる、まさに夢のような時間だった。 ほどなくして夜も更け拓哉は眠りにつく。 拓哉の寝顔を撫でる美恵子。 その枕元に見覚えのある本があった。 手に取るとそれはあの青色の本だった。     
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