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表紙に描かれている青年は、やはり夢の世界の拓哉に似ており、その本がもたらした不思議な出会いに、美恵子は感謝し口づけをした。
そして、拓哉の腕の中で美恵子も眠りについた。
翌日、目が覚めると、そこは自分の元いた現実世界であった。
やはり、眠りにつくとあの夢の世界に行け、向こうで寝てしまうと夢から覚めてしまうようである。
隣には一緒に寝ていた拓哉の姿はなかった。
一人起き上がる美恵子は、いつものように軽い朝食を取ると、もう一人の拓哉に会うため、青色の本を持ち散歩道のベンチへ向かった。
昨日とほぼ同じ時間についた美恵子は、同じベンチに座り現実世界の拓哉を待った。
一時間、二時間待ったが拓哉は現れない。
時間はいくらでもあったが、寒い中で体が冷えてきた。
また会う約束としたとは言え、いつとまでは決めていなかったため、今日はもう来ないかもしれないと思い、ベンチを立とうとした。
その時、「お隣いいですか?」と誰かに声をかけられた。
美恵子は拓哉だと思い、どうぞと喜んで答えた。
しかし、隣に座ったのは拓哉ではなく、美恵子の孫の春香(はるか)だった。
驚いた美恵子だったが、春香の顔を見ながら、「どうしたのこんな所で?」と聞く。
「どうしたのって、おばーちゃんの家に行ってみたらいないからさ。
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