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その時は突然
春香との一時を過ごしたのち、美恵子は家に帰ることにした。
拓哉と会えなかった心残りはあるものの、また明日にでも会えるだろうと軽く考えた。
春香とはその場で別れ、一人バスに乗る。
バスの中から見える景色を目で追う美恵子であったが、途中急に胸の痛みを感じた。
丁度次のバス停が、いきつけの病院最寄りであったことを思い出し、急いでボタンを押す。
胸に軽く手をあてながらバスを降りると、ゆっくりと病院へ向かった。
病院に着くと、受付で診察券を出し、椅子に腰かける。
その間も、胸の痛みは引く様子がなく、むしろ強くなっているように思えた。
「藤林さん、藤林美恵子さん。」
名前を呼ばれ、よろめきながらも診察室へ向かう。
何年も見てもらっている先生は、診察室に入ってきたそんな美恵子の状態を見て心配そうに声をかけた。
「藤林さん、今日はどうされました?
いつもより具合が悪そうですけど。」
先生の言葉に、美恵子は急に胸が痛くなったことを告げた。
「そうですか。
とりあえずレントゲンをとりましょう。
あと、検査結果が出るまで、少し別室のベットで横になっていてください。
その方が楽でしょ?」
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