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夢?
老婆は表紙の青年を見つめ、「お父さん」と呟いた。
本を開き、パラパラとめくる。
しかし、そこには何も書かれておらず、初めから終わりまで白紙であった。
けれども、老婆には何か見えているかのように、静かに笑ったり泣いたり、時にはムッとしてみたりと、ページを見つめている。
次第に眠気が押し寄せ、本を持ったままベットに移動した。
本を枕元に置くと、そのままスヤスヤと眠りについた。
眠りにつき、どれほどの時間が経ったのだろう。
老婆は誰かに揺り起こされた。
その揺り起こす手を払いのけ、また眠りにつこうとする。
眠りにつこうとする老婆を、その手がまた体を揺さぶる。
今度はその手をガシッと掴み、布団から体を起こした。
「しつこい!」と老婆は言った。
すると、目の前には見知らぬ青年が立っていた。
「たくひでーな。せっかく朝めし作ってやったのによ。」
青年は怒って言った。。
老婆はあわてて「あなたどちら様!?」と、自分が握る青年の手を払い、怯えながら言った。
青年は呆れたように、
「拓哉。溝口拓哉(みぞぐち たくや)。
もういいわ、お前がそんななら、俺一人で食べっから。」
拓哉と名のる青年は、そのまま部屋から出て行ってしまった。
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