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翔太はご近所に住む私の幼馴染だ。
金曜の夕方、翔太はいつも値下がりした菓子パンを買うためスーパーへ出かける。土日に友達と遊ぶ時のおやつ用である。私はそのサイクルを知っていたので、家の前で待ち伏せしていた。
「何そのカッコ、と聞かれると、愛され乙女、と答えるほかないわね」
「え、だからその愛されなんとかってなんなんだよ……。いつもと雰囲気違うから、誰かと思ってびっくりしたわ」
翔太の驚きももっともだ。
私は今、全身がベイクドカラーに包まれていた。
先程服屋さんで買い揃えてきた、大人めカラーコーディネートだ。着ていたジャージはお店で脱ぎ、購入したワンピースとジャケットに着替えていた。コンタクトは眼科に行かなくてはいけないので急には無理だったが、長年使い続けていた滝廉太郎ばりの丸眼鏡は外している。
私がこの格好で翔太の元を訪れたのには、理由がある。
私は腰に手を当て吠えた。
「さあ、翔太。今日は私が菓子パン運びを手伝ってあげるわ! いざ、スーパーに行くわよ!」
あの記事の最後に書かれていた言葉。
〝新しいアイテムで、新しい自分に!〟
そんなことを言ったって、どうせあの記事は来シーズンの服やコンタクトを売りつけるための宣伝でしかないくせに。ブスに夢を見させるような、都合のいいことばっかり書きやがって。
何をしようとこの私が愛され乙女になれるわけがないのだ。
それを、私は今夜証明してやる。
案の定、全身イメチェンを決め込んだ私に対して、翔太は何のトキメキも感じていない様子だった。
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