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翔太と私は長い付き合いなので、美羽のこともよく知っている。ただ、翔太は他の男とは違い美羽と会っても惚れた様子は見られなかった。
だから今まで、美羽が居ない時に美羽の話題が出ることなんてなかったのに。
「……別に、そういうわけじゃないけど。なんとなくイメチェンしただけよ。知ってる? この服の色、ベイクドカラーっていうんだって」
「なんだそりゃ。似合わねー。美羽ちゃんなら着こなせそうだけど」
「……でしょうね」
ほら。
愛され乙女なんて、やっぱり嘘っぱちだ。
どんなに着飾ってみても、私は美羽みたいにはなれない。都合よく新しい自分になんてなれっこない。あの記事は単に新しいアイテムを売りたいだけの、企業の策略なのだ。
そんなの分かってたことだけど。
……だけど。
このモヤモヤした気持ちはなんだろう……。
どうでもいい会話をしながら、私たちはようやくスーパーにたどり着いた。
翔太が店内を回りながら菓子パンを次々カゴに入れていく。それを見ていたら、不意にお腹がぐうと鳴った。
よく考えたら、学校から帰ってきて美羽と話した後すぐに服を買いに行ったので、お昼から何も食べていなかった。
「腹減ってんのかよ。しゃーねーな、パン買ってやるよ。半額で五十円までな」
翔太の哀れみに満ちた顔を、私は睨み返した。
「失礼ね。あんたに施しを受けるほど落ちぶれてないわ。五十円くらい持って……あれ」
そう言って、鞄を探ると財布を持っていないことに気付いた。
しまった。家に置いてきてしまったようだ。
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