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〝愛され乙女になる5つの方法 その4/どっさり荷物なんてNG! 乙女のマストアイテムは手のひらサイズのショルダーバッグ〟
私が今持っているのは、あの記事を参考にして買ったバッグだ。先程全身の買い物を済ませてから、私は一度家に戻り、邪魔になったジャージや荷物を置いてきていた。財布もその時一緒に置いてきてしまったらしい。
「このバッグ、全然収納力ないのよね……。前までパンパンのリュック背負ってたから、持ち出す中身を吟味してる工程で財布も抜いてきちゃったわ」
「もう、めんどくせーな。一緒に会計するからそのパンよこせよ」
仕方なく翔太にパンを奢ってもらった。ほら、やっぱり雑誌の言う通りにしてもろくなことがない。愛され乙女よりも面倒くさがれ乙女に近づいている気がする。
互いにブツブツと文句を言い合いながら、私たちはスーパーを出た。
そして二人でパンをかじりつつ、来た道を戻った。結局イメチェンなど無駄だったようだ。雑誌に書かれていた通り、私が愛され乙女になれたのならば、今頃翔太は私にときめいているはずなのだから。
そんなことを考えていると、ふと体に異変を感じ始めた。
一歩を踏み出すたび、踵がジンジンしている。
いや、つま先もだ。
「あの……翔太」
「なんだよ。もうパンはやらねーぞ」
「……足、痛いかも」
〝愛され乙女になる5つの方法 その5。ヒールの高さは女子力の高さ! 足長効果で男の子に美足を見せつけよう〟
私は今まで、スニーカーしか履いたことがなかった。
しかし、今履いているのは先程買ってきたヒール五センチのパンプスだ。初めてのヒールで三十分も歩けば当然足は悲鳴を上げるだろう。
痛みは歩くほどに増し、やがて耐えきれなくなった。
とうとう歩を止めた私に、翔太は振り返ってため息をつく。
「めんどくせーな。もう、背負ってやるから乗れよ」
そう言って翔太はしゃがんだ。
でも、その肩に手をかけることができない。小さい頃はよく遊びながらおんぶもされたものだけれど、今はそんな気分になれない。
〝めんどくせーな〟――今日何度目かのその言葉が、思いのほか胸の奥に突き刺さっている。
気付くと、私は悪態をついていた。
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