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全然自覚がない。なぜなら自分から進んで男性の部屋へ行った覚えがない。昨晩は、窓から見る景色とか、柱とか壁とかはいつもと同じで、何故か調度品だけがそっくり男性用のそれに入れ替わっていた。私は恐る恐る、その、叩き出したそいつに向かって、彼の名前を訊いてみることにした。
「オレ? ちゃんと書いてあんだろー! 望月雅美!」
表札には確かに「505 望月」と書いてある……。
「奇遇ね、私とおんなじ……って、あのねえ! マネしないでくんない?」
「お前なあ! そんなにビシッと指差してオレに向かって威張んなよ! これはマジで16年前からオレの名前だ!」
「私は生まれてこのかた、ずーっと望月雅美だって! だいたい、いきなり現れて、夜な夜な私の部屋を無断で模様替えしないでくれる? 部屋乗っ取っておいて、あなたいい度胸ね! 私はアンタと添い寝してあげた覚えはないッ!」
「だからあ! いきなり現れたのはお前だ! お前なんだって!」
「まったくもう! ……寝込みを襲った上に、ウソまでつくなんて、あんたいい加減、卑怯で腐りきった下半身してるわねー!」
「待て! オレはどこも腐っちゃいねえや! オレはただ高校から帰って来て、疲れてそのまま眠ってだ!」
「訴える……」
「何で? オレが? 何の罪で?」
「……そういやあそうね。ああ、もう、わかんない……。ラチあかない……。とにかく中へ入りなさいよ、朝からみっともない」
「……だいたい、叩き出したのはお前のほうだろうが! っつー、まだ痛てえ」
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