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いつの間にか、楽しいはずの場が、すっかり「男、望月雅美を糾弾する会」と化してしまっていた。何だかみんな、腕組んでるし……険悪な雰囲気で睨んでるし……囲まれて逃げられないし……。
「要するにだ。お前は、彼女が『異性の自分』ではないかと、そう言いたいんだな……」
「そうなんだ。昨日の晩はひとりだったし、あれからドアだって開けてない」
「じゃあ、オトトイの晩に連れ込んだんだろう! そうに違いない……お前というヤツは!」
「ちっ、違う! くっ、首を絞めるな! そーじゃなくて! お前らが来る直前に、ヤバいと思ってオレが押し込めたんだ……つい……」
「け……汚れ無きいたいけな婦女子をだなー、くおおんな不潔極まりないところに押し込めて……お前というヤツはあああー」
「ぐ、ぐげええーっつ!」
「まあまあ、えぐっちゃん。いーからそれぐらいにしなよ……雅美が、白目剥いてるぞ」
「だいたいだ! 警察沙汰にしないだけでもオレさまのせめてもの菩提心というもの……これが手加減せずにいられるかああああー」
「だわああああー」
耳許で怒鳴られ、首を絞められ……やること為すこと全部オレの所為にされるし、ああもう、何だかわからん……誰か教えてくれ……。
「ん……んあ……」
「あ、彼女、気づいたみたい……大丈夫?」
「う、うう? あ、ああ! ひ……ひいいいいいーん」(泣)
「辛かったでしょ……もう大丈夫……」
「みやこ、みやこ……こ、怖かっ……うっ、うえええええーん」
「!」
へへ。みんな驚いていやがる……お、オレが正しかったんだ……。
「ねえ、ちょっと……」
「いま、彼女、なんつった?」
「確かにみやこ……って、私のこと……」
「つまりだ。彼女は初対面の秋本の名前を知ってる……ってことは……」
「な、なんだよ」
「これは一体どういうことなんだ! 吐け! いますぐこの場で洗いざらい吐け、吐くんだああああッ!」
「お、オレに訊くなああああ! わからん……ぐ、ぐ、ぐるじい……」
「えぐっちゃん、ああ、えぐっちゃんマジ入ってる……リリース、リリースね。どうどうどう……」
「んはっ……はあ、はあ、はあ……」
これで少しは楽になった……と思ったら大間違い……。
「彼女は、お前になんつった……」
「はあ?」
「彼女自身の名前を名乗ったかーってことだ!」
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