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「おそらく」
「命か?」
「分からない」
「数は分かるか?」
「十七」
「流石だな。俺は方角だけだ」
「ここに居てくれ」
「いいのか?」
「二流だからな」
「…分かった」
「助かる」
俺は馬車から降りて森に足を向けた。
「あれ?ケラレさんはどこに行ったのですか?」
「おう、兄ちゃんなら小便行くって言ってたぞ」
「ちょっと、もう少し上品に言って欲しいんだけど?」
背後から微かに聞こえるそんな会話を耳にしながら、俺は鬱蒼と茂る森の影の中に入った。木々が光を遮っても完全な闇にはならないが、はっきりとした明暗の差は俺の視界に映るものを白から黒に変える。
そして少し歩き街道から大分離れた所で立ち止まった。
次の瞬間、襟巻で覆面をした男が現れ俺の背後から曲げ短刀を俺に振り下ろす。しかし襲って来るのは事前に分かっていたので、攻撃をいなして腕を捻り上げ組み伏せて無力化した。さらに喉を押さえて大声を出せないようにする。
俺は奪った曲げ短刀を組み伏せた男の首に当てた。
「小声なら出せる筈だ。質問に答えろ」
男は怯えた目で何度も首肯する。
「襲撃の目的は何だ?」
「お、お頭が言ったんだ。ある貴族の令嬢が少ない護衛で旅をしていて、この街道を通る馬車に乗ってるから誘拐して金をせしめようって………!」
「その情報はどこで?」
「俺は知らねぇ!でもお頭なら知ってる!本当だ!」
「そいつの特徴は?」
「一番の大男だ!額に傷があって、棍棒を持ってるのがお頭だ!
頼む、助けてくれ!」
「いや、知りたい事は全部知った。お前は殺す」
男は恐怖に目を見開いた。俺はここで喉を押さえる手を緩めてやった。
「い、嫌だ!誰かたすっ、」
少し叫ばせた後、短刀を持つ手に軽く力を入れる。最小限の破壊で男は動かなくなった。
「おい、どうした?」
声を聞いて他の賊が集まって来た。三人いる。
俺は回り込み三人の後ろに付いて、まるで四人目のように後を付いて行った。
そして三人の賊が死体を発見し動揺する。俺はその瞬間を狙って、一番後ろの賊を物陰に引きずり込み、隠し持っていた鋼線で首を締め始末した。
残った二人はまた一人減った事に気付き警戒する。お互いの死角を補うため、背中合わせで行動し始めた。だが、それは相方を視界に捉える事が出来ないという事でもある。
賊二人が、俺が登って隠れた木の下に差し掛かった時、俺は一人の賊の首に上から鋼線を巻きつけた。そして間髪入れず、鋼線の逆の端をくくりつけたさっき仕留めた賊の死体と一緒に木の上から反対側に飛び降りる。首に鋼線を巻きつけられた賊は滑車の要領で音も無く木の上に吊り上げられ、しばらくもがいた後に絶命した。
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