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「いやー凄かったね、あの魔法!一瞬で三人がかちんこちんに固まってたもん!ベニーはいつ発現したか気づいた?」
「いえ、私もいつ発現したか気づきませんでした」
「だよね。事前に知らされてなかったら魔法を使ったかどうかすらわからないよ。さすが英雄」
「……あれに気づくとは姫殿下もさすが皇族といったところですね」
皇族は初代皇帝の頃から魔法の才能に秀でた一族だと知られている。結界の管理と維持にはその方が都合が良いため、魔法の英才教育も行われているらしい。
そして俺は自分の魔法が知れ渡っている事と、年端もいかない少女にも見破られた事で少し落ち込んでいた。
「やだなー。姫殿下なんて堅っ苦しいのはよしてよ。それにそんな呼び方じゃあ護衛にも差し支えるでしょ?」
「それもそうですね。では何か偽名を使いましょう。どんなものがよろしいですか?」
「ルーって呼んでよ。二人きりの時はベニーにもそう呼ばせてるからさ。あと敬語も無しにしない?」
「良いのですか?」
「良いって良いって」
「では……。わかった、ルー」
「お、順応早くていいねー」
そこにベネウォルスが口を出す。
「まったく……。あなたは自らの態度が他人に与える印象というものを少しは考えてください」
「だめだよベニー。ルーって呼ばないと。それに敬語も禁止」
「えっ」
「護衛のためだからね。別にいつも口煩いから仕返しする訳じゃないよ?」
「……」
「ほらほら」
「……わかったわよ、ルー」
ベネウォルスは相当無理しているように見える。
「いや、敬語くらいなら無理しなくても良いんだが……」
俺の言葉にルーが応じる。
「いや、ベニーは私以外の前で砕けた話し方するのが恥ずかしいんだよ。この子箱入りだからさ」
「ちょ、ちょっとルー!やめてよ!」
二人してきゃいきゃい話し込んでいる。付き合ってられない。
「ともかく」
ベネウォルスが俺に向き直った。
「これからの旅、よろしくお願いします。ケラレさん。
どうか私たちを守ってください」
そう言って手を差し出してきた。
「わかった。必ず君たちを守るよ」
俺はその手を握った。その手は暖かく、しっかりと俺の手を握り返してきた。
そんな俺たちをベネウォルスの背後からルーが見ていた。
何かを、値踏みしているような目だった。
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