あの娘には近づくな

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あの娘には近づくな

 楠ノ瀬(くすのせ)と過ごした後――。  心地よい倦怠感に(さいな)まれた俺は、いつのまにか眠ってしまったみたいだった。  次に目覚めたとき、俺は自分の部屋にいた。  使い慣れたベッド。  見慣れたインテリア。  見上げた先にはいつもの天井……。  ――誰が送ってくれたのだろう?  家の者に聞いて回ったが、誰も彼もが「俺はずっと家にいた」と口を揃えた。  ――夢、だったのか?  俺は自分の掌を広げて、見つめた。  あいつの髪の感触が甦る。長くてしっとりとした、楠ノ瀬の髪の感触が……。  ――あんなにリアルな夢があってたまるか……!!  俺は何度も何度も自問した。  あれが現実でないわけがない、と。  ――だって。  俺の腹の上で柔らかくつぶれた胸の感触も。  貪るように絡み合わせた舌の味も。  そして、俺のものを咥え込んで吸いついたあの唇も。  ……何もかも鮮明に思い出せるというのに。  俺はすぐにでも楠ノ瀬に会って確かめたかったが、彼女は翌日から三日間ほど学校を休んだ。
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