田舎の怖い噂

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山沿いの雪の田んぼ道に点々と人の列が見える。 頭に菅笠をかぶった着物姿の女性。 暗い表情をした彼女らは綺麗に横一列に並び、 ゆっくりゆっくりと何かを植える動作をしながら こちらへと向かってくる。 それが見えたら、どんなに急いでいようとも 道を引き返さなければならない。 さもないと、彼女たちに取り囲まれてしまうのだから… …田植えの時期、 女たちが横一列に並んで稲の苗を植える。 昔、それは当たり前のことであった。 列は年長者や熟練者ほど端に行き 真ん中にいくほど若年者や嫁に入りたての女が入る。 そうして皆で植えていくのだが、 当然ながら経験の浅い女ほど上手に植えられない。 周囲の女たちは手早く植えていき、 もたついているあいだに周りから全ての苗を植えられてしまう。 そうして田の真ん中で孤立し呆然とした女を 周囲の人たちは当然のように囃し立てたのだという。 このあたりの集落ではそういうことが頻繁に行われていた。 若い女を田んぼに孤立させ笑い者にするのが常だった。 残った女は顔を赤らめ うつむきながら植えた苗を避けて歩いていく。 当たり前の光景。 当たり前の習慣。 しかし、そんな女の中に まれに姿を消すものがいた。 ひとしきり周囲が笑い、小休止をしようとふと目を離した瞬間 すでに女の姿が消えていることがままあった。 どこを探しても見つからない。
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