続編

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続編

最近、彼が夢に出てくる様になった。 夢の中の彼とぼくはとても幸せそうに笑いあっていて、淡くやさしく笑顔を浮かべる彼にむかってぼくがなにかを言う。 それが彼の名前だということが分かる。 夢だから聞えなくても、それが彼の名前だとすぐに気が付く。 夢の中のぼくが嬉しそうに彼の名前を呼んでいる。 自分の事なのに、名前を呼んでいる事実に嫉妬してしまう。 ぼくも彼の名を呼べればいいのにとさえ思う。 だけど、幸せな夢だった。 その筈なのに起きたときにはぐっしょりと汗をかいていた。 そっと、ぼくの頭を撫でる腕が視界に入る。 彼が僕の頭を撫でてくれている。 それがとても嬉しくて、彼に微笑みかけた。 ◆ 彼らに再会したのはそれから数日後の事だった。 いとこへの結婚祝いを買いに出かけてきたのがよくなかったのかもしれない。 気まずい雰囲気でばったりと出くわしてしまった彼らをみて、ああ、お祝いなんてものは現金にすればいいんだと思う。 露骨に視線を彷徨わせた方の彼は、高校生の時の様に吐き気をもよおしている様子はない。 「先生、お久しぶりです。」 もう一人の方はとても残念なものを見る表情でこちらを見ながらそんな社交辞令にも似た言葉を言う。 この子たちはぼくとは違う見え方で彼が見えているらしい。 多分彼を見つけて無視ができなくて目があってしまった。 「相変わらず、なんですね。」 「ああ。 喉は、アレルギー性のものだって診断されているよ。」 体調は思わしくない。 惰性の様に大学を卒業して惰性の様に勤め始めている。 ただ、そこに彼はずっと寄り添ってくれている。 「最近は夢にも彼が来てくれるんだよ。」 ぼくが、そう言う。 久しぶりに彼のことを知っている人間に会ったせいで饒舌になってしまったのかもしれない。 今回も顔色悪く見える方のこが逡巡した後口を開いた。 「……夢の中の方が幸せじゃなかったですか?」 あてずっぽうなのだろうか。それとも彼の夢に対する価値観がそうだからなのだろうか。 確信がある様子で、聞いてくる言葉にドキリとした。 「もし、夢の中の方が幸せなら――」 彼を拒絶した方がいいですよ。 青白い顔で、言われる。 「首のそれ、だんだん見えてきているんですよね。」 ひっかき傷がありますよ。 そんな筈はない。彼との生活は充分満ち足りている。 本当だ。 「余計なお世話、だよ。」 そう返すと、彼がぼくを褒めるみたいに抱きしめてくれた。 彼に笑いかけると「じゃあ、また縁があったら。」と言葉をかけその場を後にした。 見た目が派手な方のこが、もう片方のこの手を握りしめているのが視界の端に見えた。 ああ、あの辺鄙な学園を出てからも二人はずうっと一緒なのか。 別に羨ましくもなんともないけど。 羨ましいという考えで一つの可能性に思い当たる。 ああ、もしかして。 「彼ならあなたの名前分かったかもしれないですね。」 聞いておけばよかったかもしれない。 そう思っていると、彼はとろけるような笑みを浮かべた。 お題:その後、繋がる指先の2人の出演
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