絡まる糸

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絡まる糸

ぼくは幽霊に恋をしている。 その幽霊がどのような経歴の誰なのかはぼくは知らない。 ただ、彼は気が付いたらぼくのそばにいて、いつも優しくぼくを慰めてくれていた。 ぼくには友達と呼べるような人間もいないし、普段の話相手はほとんどこの幽霊だ。 だから、怖いとかはあまり思わない。ドキドキすることはたまにあるけど。 幽霊は自分の名前をいうことはないし、自分の境遇を話すこともない。 死んでいることは理解しているみたいだけれど、そのことを話すこともほとんどなかった。 それが逆に心地よかった。 幽霊の生前が希望に満ちたものでも、そうでなくても、きっとぼくは幽霊に対して嫌な感情を抱いてしまうからそれでいいんだ。 ケフッ、ケフッ。 最近渇いた咳が出るようになった。 喉の奥にやや違和感がある。 教育実習までに治るといいなあと思った。 別に教師にどうしてもなりたいとかそういうのではないが、実習中に咳が出てしまうのは面倒だなと思った。 教育実習先は自分の母校ではなく、山奥にある全寮制の男子校だった。 何かの手違いなのか、それとも大学が適当なことをしたのかも知らない。     
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