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けれど、自分の母校に思い入れのある教師がいる訳でもないし、どちらでも構わなかった。
それに、幽霊はどこにだってついてきてくれるのだ。
僕の後ろでいつも見守っていてくれるのだ。
それなら、どこでも一緒だと思った。
「愛しているよ。」
ぼくがそう囁いても幽霊は返事をしない。
◆
教育実習はいつも通りだった。
だれもぼくに期待をしないし、誰かと心を通わせることもない。
教室に入った瞬間、落胆の表情を浮かべられることも想定の範囲内だ。
困ったように笑うぼくの担当教諭に、入れるべきフォローもよくわからず、最低限の指導だけされる日々だった。
最終日、一人の学生がものすごい顔色をしてぼくのもとにやってきた。
もう、職員室の片隅に用意された自分の机はすべて片付け終わって後は帰るだけの廊下でだった。
放課後でもう人はいない。
顔色の悪い生徒の横には生徒会の役員だと紹介された学生が立っている。
二人とも特に教育実習中何かを話した記憶がない。
思わず、幽霊の方に視線をすがるように移すと、彼はにっこりと笑ってぼくを励ましてくれた。
ひっ、という喉から出る悲鳴を聞いた。
「……先生は道ならぬ恋をされていますか?」
呻くような声だった。
なぜ突然そんなことを聞かれるのかがわからなかった。
生徒の顔色は先ほどよりさらに悪い。
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