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「先生は彼岸に引かれています。」
もはや真白を取り越して青い顔をして言う生徒は吐き気をこらえているようだった。
うつむいて小刻みに震える手を止めようとしているのかごしごしとこする姿は異様だった。
「……俊介、もういいと思うよ。」
横にいた生徒会役員の生徒が口を開いた。
それから、顔色の悪い生徒をぎゅっと抱きしめた。
教育実習の最初に、ゲイが多いと聞かされてはいたがきっとこの生徒達もそうなのであろう。
別にどうでもいいことだったので今まで気にしていなかったし、今も大した感慨はない。
まるで何も見せない様にする抱きしめ方で今度は俺に話かける。
「信じても信じなくてもいいですけど、俺たちには人の縁が見えるんですよ。
先生の縁、首元でぐるぐる巻きになってからまってますよ。
このままだと首しまりそうですね。
こいついわく、生きてない人間に恋でもしてるんだろうってことらしいですけど。」
淀みなくいうが、眉根が寄っている。
でも、そんなことはどうでもよかった。
「それは、彼がやっているってことかな?」
ぼくにとってはそれが一番重要だった。
「その彼、ってのが誰だかは知りませんけどおそらくは。」
吐き捨てるように言われ、それが確信に変わる。
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