身代わり唄

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「身代わり唄」、それは某県某村某集落に昔から代々伝えられた童唄(わらべうた)である。 その「身代わり唄」の歌詞がこれだ。 『魂攫い(さらい)に 物怪(モノノケ)来るぞ 魂何処(どこ)だと 物怪(モノノケ)来るぞ おいその物怪(モノノケ)よ 善く聞いて置けよ 魂欲しけりゃ くれてもかまん(かまわん) 然し(しかし)その代わりに その代わりによ 我が身護る霊 生贄(いけにえ)に出す 出すから物怪(モノノケ) 許しておくれ 我護る霊よ 身代われよ 生贄賛賛 幽燦燦』 その某集落には週一日、魂に飢え腹を空かせた物怪(モノノケ)が来るらしい。 もし自分の所に物怪(モノノケ)が来たとしても、この「身代わり唄」を唄い切れればその場は助かるが、1回につき5年自分の寿命が縮んでしまう。 この唄に出てきた「我が身護る霊」とは自分の守護霊であり、その自分の守護霊を物怪(モノノケ)にいけにえとして差し出してしまうと、その差し出された守護霊はもう二度と現世に帰ってくる事が出来なくなる。物怪(モノノケ)に魂を喰されてしまうからだ。 しかし、自分に守護霊が必ずしも居るとは限らない。もし守護霊が居なかったり、出し尽くしてしまったりするとその時は助からない。 しかも、一度集落に住んでしまった者はそれから先ずっと永遠にその集落から出る事は出来ない。もし出ようとすると、集落全体に張られている「呪縛の結界」というものに一瞬で呪い殺されてしまうのだ。しかもなんと、他所(よそ)から来た者も集落の民の様に一生、物怪(モノノケ)に喰い殺されるまでその集落で暮らさなくてはならないのだ。 入ったが最期、一生外に出る事は不可能だ。 某集落の目印は幹が緑色の大木である。 もしその目印を何処かで見つけてしまっても絶対に近づくな。 最悪、大木が貴方を集落に引き摺り込む。 だから、死にたくなければ絶対に近づくな。
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