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「……彼は彼で神経を使う、大変な仕事なんだと思うんだけど、そういえば僕の仕事の相談ばかりで、彼の仕事の話をあまり聞いたことがなかった、かもしれない」
「そりゃ、10も年下のお前に相談できることなんてあるわけないだろ。仮にあったとしても、俺だったら話さねぇよ」
「そう、だよね。こんな、26にもなって泣くような奴に相談できることなんて、ないよな」
高槻さんが連れて行ってくれたバーのカウンターで、一度だけ肩に腕を回してぽんぽんと2回たたいてくれたことを思い出した。大きく血管の浮き出た、角ばった手。静かにグラスを置きグラスと机がかすかに触れる音。鼻筋の通った、横顔。暗がりに浮き上がる白シャツ。
俯いて黙れば黙るほど、彼にやさしくしてもらった記憶がよみがえり、余計涙があふれてきた。
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