ただ歩く、独り。

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ただ歩く、独り。

あと数時間で年も明ける・・・ ・・・大晦日の夜。 「大掃除、忘れてた」 ・・・来客予定などない。 「別にしなくてもいいかな・・・」 コーヒーをテーブルに置き、、 ソファへ腰を下ろす。 ただ流しているだけの深夜番組、 年末年始は『お笑い』とか 『この一年の事件簿』とか。 毎年変化があるわけでもない。 「相変わらすツマラないなあ」 いや、ツマラナイのは 番組の構成の責任ではない。 うちの家族構成。 先月、唯一の家族だった母が死んだ。 「頭が痛い!」 が、最期の言葉。 父は私が小学校入学前にすでに他界、 女手一つで 私を大学まで行かせてくれた母。 「学歴がないっていうのは  首がないのと同じ!」 母は呪文のように私に言い聞かせて 学校、塾と躍起だった。 学歴も手に職もない母は父の病死後、 僅かな生命保険金を減らすことを 良しとせぬ母は 店舗清掃の仕事に明け暮れた。 確かに私も子供心に 「大学を卒業しなければ  体が楽な仕事には就けない」 そう思っていたところもある。 でもそれ以上に「勉強せねば」と 頑張り始めたのは 母の日記のようなスケジュール帳を 偶然見てしまってから・・・。 ビッシリと詰まる仕事予定、 でもそれより驚いた ノート端の小さな落書き。 「人ごみに 押されし我が身           ひとりぼっち」 胸がキュウと・・・締め付けられた。 自作か他作であるかは不明。 でも、帰宅して台所で 「今日も、終わった・・・」 そう言ってしばし動きを止める姿と 俳句が重なり、 いつまでもいつまでも 胸が痛かった。
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