崖っぷちなオレに完璧なるメロディーを

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崖っぷちなオレに完璧なるメロディーを

書けない。 書けない。 朝から晩までアイディアを捻り出そうとして考え込むが、何一つ音は降りてこない。 何日も時間をかけようとも五線譜は白いままだ。 オレは出だしの音符すら決められず、延々足踏みを繰り返していた。 「クソッ。何も浮かばねぇ!」 八つ当たり気味に譜面台の上の白紙をグシャリと握り潰した。 勿体ないだなんて思わない。 それどころか、歪んだ五線譜が「まるでお前の人生みたいだな」と嗤(わら)ってるような気がして、堪らず屑カゴに投げ捨てた。 「ライブまで後3日しかねぇってのに……。早く書かねえとスタジオ練習すら出来ねぇぞ」 オレは完全に追い詰められていた。 期日という意味でも、『夢追い人』としての年齢においてもだ。 バンドマンとして一攫千金を目論んで早10年。 一向に芽が出る気配すらなく、年齢を重ねていくだけの日々を過ごしてきた。 自分が武器と思えるのはせいぜい、苦難を共に乗り越えたメンバーとの絆と、そこそこ良いと評価される見た目くらい。 他に目立った取り柄など無に等しい。 割かしモテるという利点をフル活用し、どうにかして彼女に養ってもらえる身分を得る事ができた。 だが、その立場もここ最近は危うい。     
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