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私は私立の女子高に通う、普通の高校二年生。
父と母と三人暮らしの家は住宅街にある一軒家。ご近所さんとも挨拶程度の会話はする、本当に普通の家庭。
ところが。
最近、仲良くしていた老夫婦が引っ越してしまい、空き家となった隣家に、新しく入居者が決まった。
ちらっとだけ見た風貌は、若いお兄さん。
男性にしては髪は長めだが、背が高く、目鼻立ちもはっきりとしていて、正直、かっこいい。
たった一人で住み始めたと言う彼から、最近何故か…………視線を感じる。
庭先に出て、ポストの中を覗いているお兄さんを横目に、私は最寄り駅へと急ぐ。
すると「おはよう、学校、行ってらっしゃい」と爽やかな声で私に微笑み、告げる。
「おはようございます、行ってきます」と私も返す。笑顔で。
一見すると、自然な朝のお隣さんとの会話。
だが、私は知っている。
お兄さんは、平日しか、この時間にポストを覗かないのを。
そして、私が通るのを今か今かと待っていることを。
何故、私には解るのか。
簡単なこと。お兄さんは毎朝、私と同時刻に起きているからだ。
家同士の距離が近いのもあるが、私の部屋はお兄さんの部屋と更に近いらしく、私が起きる頃、お兄さんはあろうことか、私の部屋を凝視している。
立てている全身鏡でたまたま身支度をしていた時、視界の隅にとらえた。
お兄さんが目を見開きながら、私の姿を凝視していることに。
「ひぃっ」
思わず声が漏れたが、幸い、お兄さんには届いていないみたいだった。
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