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そして、時間は流れ、問題の家を出る前。
始めに不審に思ったのは、挨拶をしてくるタイミングと頻度。
タイミングは狙ったかのようで、毎日、挨拶を交わすようになった。
一度、玄関から小窓を開け、こっそりと隣を覗けば、ポスト側の茂みにお兄さんと思われるグレーのカーディガンが見えた。
私が扉を開く音。つまり、玄関の音が鳴ったら、顔を上げる作戦なのかもしれない。
そう考えると、いよいよもって恐怖を感じ始めた。
私は気づいた瞬間から、自惚れ覚悟で父と母に伝えた。お隣さんはやばいぞ、と。
「それは無いだろう。あんなに大人しくて優しそうな彼が? 勘違いだろう」
「うふふっ、おかしいわ! 相手されるわけ無いじゃない……冗談なら止めなさい? お隣さんはモテるわよ、きっと。彼女だってもっと美人よ」
いや、わかってるよ! そうかもしれないけど……どうしよう、お隣さんは見るからに優しそうだし、紳士な感じもする。
きっと、もしかしたら、ああいう人が殺人とか犯している罪人かもしれない。
人は見かけによらないと言うけれど、もしそうであれば、次のターゲットは私だ。確実に。
殺される!!!
そう思い立った昨夜から、私の命懸けの生活が始まった。
今も、鞄の中にはカッターが仕込んである。もしも、のとき用だ。
それに、雨は降っていないが傘も持ち歩いている。これも、もしもだ。
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