どこ。

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 セッティングしたスマートフォンを前に、私はばっちりとポーズを決めた。今日は髪もお母さんに丁寧に結んでもらったし、一番お気に入りの髪止めをつけてきたし、服だって一番好きなピンクのワンピースだ。学校に行くだけなのにどうしてそんなにおめかしするの?とお母さんには不思議がられたけど適当に誤魔化した。  今からやろうとしていることを話せば、やれネットの恐ろしさうんぬんだの変態が沸くだの、煩く止められるに決まっているのである。いつまでも子供扱いされてたまるものかと私は思う。もう十二歳、立派な大人だ。ほら、スマートフォンだって動画だって、お母さんよりずっと上手に扱えるし、詳しいのだから。 「いえーい!どうも皆さんこんにちは!ミホでーす。今日は小学生の特権!ウチの学校のホラースポットを、チャンネルを見てくれてるみんなにだけ特別にご案内しちゃいまーす!」  自慢じゃないが、私はクラスの女の子で一番かわいいという自覚がある。クラスの人気投票でも一位になったし、私が少し笑いかければ男の子達はみーんなメロメロなのだ。きっと、学校の外に出てもそうであるはず。私の夢は、いつかアイドルになって、AKBのように可愛い服を来て歌って踊ることなのだ。 ――あー、でもAKBはだめかも。だって人数多いもん。私が目立てないなんてやだなぁ。一人で歌える可愛いアイドルの方がいいなぁ。  まあ、どんなに人数がいようと、一番輝いてみせる自信はあるのだが――まあそれは置いておいて。  自分からアイドルの養成所に通ったりするのはお金がかかる。というか、カタブツなお父さんとお母さんに反対されるのは明白だ。なら、向こうから“アイドルになってください!”とお願いしてくるように仕向ければいいのである。  つまり早い話、ユーチューバーとして人気になって、みんなに注目されるようになればいいというわけだ。 ――お母さんがスマホとか全然詳しくなくてよかったー。きっずケータイ?とかそういうの設定されちゃたまんないもん。ほんとアレうざいよね、エロ広告弾かないくせに普通の掲示板とかSNSが見られなくなるとかマジ意味わかんないし。  今のご時世、動画はスマートフォンでも撮影できるし編集できる。私は自分のスマホを使って、YouTubeにアップする動画を録ろうとしているのだった。場所は、いつも通っている小学校。ただし時間は――児童の殆どが帰ってしまった夕方だ。
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