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『お掛けになった電話番号は、現在使われておりません……』
誰に電話をかけても。家の電話も両親の携帯も友達の電話も、全部。
どうしてみんな――繋がらないのだろう。
電話番号が使われてないなんて、そんなことあるわけない。それじゃあまるで、みんないなくなってしまったみたいじゃないか。
――嘘だよ……こんなの嘘!嘘!嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘っ!!
夕焼けに染まる廊下で膝をつく私は――ここに来てようやく、トイレの噂を正確に思い出していた。
『四階の女子トイレの一番奥の個室に、四時四十四分四十四秒にいてはいけない。
霊能者は言った。そこにだけは絶対に入ってはいけないと。
入ったら最後、“どうなるのか誰も知らないのだから”――と』
――噂に、オチがないのは……ひょっとして。
脱力した手の中から――ころり、と携帯電話が転がり落ちた。
――その噂を試して……“誰も生きて戻ってきてない”から、なんじゃ。
気がついたところで、もう遅い。
私は今、此処にいる。学校の姿をした、何処かもわからぬ此処で――一人途方に暮れている。
このまま死ぬまで閉じ込められるのか。それとも、もっとこれから恐ろしいことが起きるのか。今の私には、何もわからない。そして、誰かに語ることも出来ない。
私はまだ、何処にも帰れてはいないのだから。
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