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小屋が燃えている。女の住んでいた小屋が、真っ赤な火柱を上げていた。
男はたった一人その前に立ち、天に昇っていく火の粉をただじっと見つめていた。
ほどなくして、銃を持った猟師たちが男の背後にぞろぞろと集まって来た。
皆、雪女の噂を聞きつけ、討ち取って名を上げようと、その土地に集まってきた者たちだった。
燃え盛る小屋を見ながら一人が言った。
「殺ったのか?」
「ああ…」
男は振り返らず言った。なぜ火をかけたのかという質問に、男はこう答えた。
「何度撃っても、どんなに切っても、雪女は死ぬ事が無かった。もう炎でなければ、あいつを殺す事はできない」
そして男は振り返り、手にしていた女の長い髪を、猟師たちに見せた。髪にはべっとりと血が染み込んでいた。
男は集まってきた者たちを睨み、静かに言った。
「中は見ない方がいいぞ。匂いで三日は飯が食えなくなる」
その鬼気迫る表情に、猟師たちは圧倒された。小屋に近づく者は誰もいなかった。
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