雪女のぬくもり

3/4
前へ
/4ページ
次へ
 小屋が燃えている。女の住んでいた小屋が、真っ赤な火柱を上げていた。  男はたった一人その前に立ち、天に昇っていく火の粉をただじっと見つめていた。  ほどなくして、銃を持った猟師たちが男の背後にぞろぞろと集まって来た。  皆、雪女の噂を聞きつけ、討ち取って名を上げようと、その土地に集まってきた者たちだった。  燃え盛る小屋を見ながら一人が言った。 「殺ったのか?」 「ああ…」  男は振り返らず言った。なぜ火をかけたのかという質問に、男はこう答えた。 「何度撃っても、どんなに切っても、雪女は死ぬ事が無かった。もう炎でなければ、あいつを殺す事はできない」  そして男は振り返り、手にしていた女の長い髪を、猟師たちに見せた。髪にはべっとりと血が染み込んでいた。  男は集まってきた者たちを(にら)み、静かに言った。 「中は見ない方がいいぞ。匂いで三日は飯が食えなくなる」  その鬼気(きき)(せま)る表情に、猟師たちは圧倒された。小屋に近づく者は誰もいなかった。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加