雪女のぬくもり

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 それから三年が経った。  男はずっと一人で暮らし続けた。そして時折、女のことを思い出した。猟で捕らえた動物の冷たくなった体に触れると、女と過ごした日々が脳裏(のうり)に浮かんだ。  女の肌は冷たかった。抱きしめれば、男の全身は霜焼(しもや)けのように真っ赤になった。女の体も男の体の熱で、火傷(やけど)をしたように真っ赤に染まっていた。  小屋が燃えたあの日、男は髪を短く切りそろえた女の背中を見送った。そして女から受け取った髪を(ふところ)にしまい、守り刀で自分の手の平を切った。  男の元へ訪ねて来る女がいた。(おの)(まき)を割る男の背中に向かって、女は言った。 「ジン…」  男は手を止めて振り返り、幼い子供を連れた女に向かって言った。 「シノ…」
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