3人が本棚に入れています
本棚に追加
それから三年が経った。
男はずっと一人で暮らし続けた。そして時折、女のことを思い出した。猟で捕らえた動物の冷たくなった体に触れると、女と過ごした日々が脳裏に浮かんだ。
女の肌は冷たかった。抱きしめれば、男の全身は霜焼けのように真っ赤になった。女の体も男の体の熱で、火傷をしたように真っ赤に染まっていた。
小屋が燃えたあの日、男は髪を短く切りそろえた女の背中を見送った。そして女から受け取った髪を懐にしまい、守り刀で自分の手の平を切った。
男の元へ訪ねて来る女がいた。斧で薪を割る男の背中に向かって、女は言った。
「ジン…」
男は手を止めて振り返り、幼い子供を連れた女に向かって言った。
「シノ…」
最初のコメントを投稿しよう!