95人が本棚に入れています
本棚に追加
何も言わず皿を片付ける葵の背中に和希が投げかける。
「…気には、なる」
窓側に堂形 深鈴が、向かい合って要と満琉が座っているので、要の背中しか見えない。
(どんな顔してるんだろう…)
架南に生写しの人を前にして、要はどう思うのか、気になって心がザワザワする。
「偶然、似てるのかな?あんなに似てたら…」
ふいに、堂形 深鈴がその視線を滑らせた。
目が合った瞬間、ふわりと笑う。
口元も目元も笑っているのに、その瞳の奥にある何かが違うのだ。
言葉を失い、凝視する葵に気づき和希が背後を振り返ると、堂形 深鈴が目を逸らすところだった。
「オレはあの顔、昔からキライ」
ムスッと口を曲げて和希はカウンターに頬杖をつく。
「整いすぎてんだよなー。人形みてぇ」
確かに、堂形 深鈴の顔は整いすぎて見える。
覚醒して見る前世は、夢で自分の視点の意識を観る。
録画された映像をランダムに再生し観ているので、自分は映らないのだ。
だから葵が前世である架南の顔を見たのは、二度だけ。
その時の架南の顔は整っていて綺麗だったけれど、堂形 深鈴よりは感情があったように思う。
たった一人への愛に満ちていたから…
最初のコメントを投稿しよう!