序章 胎動

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何も言わず皿を片付ける葵の背中に和希が投げかける。 「…気には、なる」 窓側に堂形 深鈴が、向かい合って要と満琉が座っているので、要の背中しか見えない。 (どんな顔してるんだろう…) 架南に生写しの人を前にして、要はどう思うのか、気になって心がザワザワする。 「偶然、似てるのかな?あんなに似てたら…」 ふいに、堂形 深鈴がその視線を滑らせた。 目が合った瞬間、ふわりと笑う。 口元も目元も笑っているのに、その瞳の奥にある何かが違うのだ。 言葉を失い、凝視する葵に気づき和希が背後を振り返ると、堂形 深鈴が目を逸らすところだった。 「オレはあの顔、昔からキライ」 ムスッと口を曲げて和希はカウンターに頬杖をつく。 「整いすぎてんだよなー。人形みてぇ」 確かに、堂形 深鈴の顔は整いすぎて見える。 覚醒して見る前世は、夢で自分の視点の意識を観る。 録画された映像をランダムに再生し観ているので、自分は映らないのだ。 だから葵が前世である架南の顔を見たのは、二度だけ。 その時の架南の顔は整っていて綺麗だったけれど、堂形 深鈴よりは感情があったように思う。 たった一人への愛に満ちていたから…
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