序章 胎動

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図書館の仕事に復帰した葵に付き添い、和希が警護してくれているが、葵が仕事中は昼寝かナンパと和希なりに時間を潰している。 和希のナンパを目にし過ぎて、葵はすでに和希の好みのタイプがわかってきたくらいだ。 「手始めに、彼女を家まで送り届けて篠宮と交代だ」 「………りょーかい」 痛い腹をつかれたからか、和希が渋々了承する。 「それは、困りますわ」 いつの間にか和希の背後にいた堂形 深鈴が割って入ってきた。 その後ろで満琉が手を合わせ無言で謝っている。 テーブルに引き止めておくことができなかったらしい。 「別件で要様にお話があるとのことで、お連れするようにとお父様に言われてます」 堂形 深鈴の伏せ目がちの目が葵を見る。 まるで品定めをするかのような、嫌な目である。 「今ご一緒頂けるのは要様でなくては…先程はそう言う手筈になったはずですが」 「わかりました…出かける準備をするので、お待ち頂けますか?」 「はい、わかりました」 堂形 深鈴は満面の笑みを浮かべ、テーブル席へと踵を返した。 ソファ席にいて素知らぬ顔の祥吾が、そんな堂形 深鈴を広げた新聞から目から上だけを覗かせ眺めている。 そして要が繋いだ手をそのままにエレベーターホールへの扉を開ける時、葵は祥吾と目が合った。 何か言いたげで気になる目をしていた。     
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