95人が本棚に入れています
本棚に追加
「深鈴さんは要くんの事を好きなんですよね?」
深鈴は問われて、目を見開いた。
「あなた…何を言っているの?」
驚いた様子で問い返してくる。
「好きだ愛してるなどと一時の気持ちで結婚するなんて愚かだわ…家の為、一族の為に、血を深める為の結婚よ」
「…え?」
血を深める為、その言葉がやけに印象に残った。
「あなただって、一時的だからこそ彼とは踏み込んだ関係にならないのでしょう?」
「…踏み込んだ関係?」
何だろうか、深鈴の言葉は何もかもすんなり入ってこない。
拒絶反応なのだろうか。
「1ヶ月近く同棲していて、『まだ』なんですってね…それっておままごとみたいな同棲よね」
何を言われているのかがわかり、葵は顔を赤らめる。
「彼も、踏み込む気がないってことでしょう?」
くすくすと深鈴が笑い、口元に手を当てた。
誰から聞いたのか、なぜ知っているのか…
葵は動揺し、手にしていた本を落とした。
酷く惨めな気持ちになった。
最初のコメントを投稿しよう!