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「おっはようございまーす」
朝8時近く、壊れんばかりの勢いでエレベーターホールから続くドアが開かれる。
「こら!静かに開けてって言ってるでしょう」
そして、満琉から毎朝、小言で朝の挨拶を返される和希はハイツ・スローネの新参者だ。
「大丈夫だって!鍛えられて強くなんだよ」
満琉の小言など意に介さず、和希は笑い飛ばす。
「まったく…」と呟く満琉だが、和希のことを嫌っている訳ではないらしい。
相良和希、大学休学中にして、家出中の22才、スローネの家賃を労働で支払う居候。
ワックスで毛先を遊ばせルーズなニュアンスにセットしている茶髪に、ダメージジーンズ、見た目を裏切らず中身もしっかりチャラい青年である。
和希はカウンターに座らず、朝食を食べる葵の元へと歩いてきた。
カウンターから少し離れたテーブル席で要と葵は朝食をとっている。
住人が増えたからと、言うのは建前で、要が和希と一緒にカウンターに座りたくないのだと葵は感じている。
「あーおい、おはよ」
「おはよ、和希くん」
葵の肩に手を置いた和希を要は鋭い眼光で睨みつけた。
その視線を真っ直ぐに受け止め、和希がニヤリと笑う。
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