序章 胎動

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仕事にほぼ関わらなくなっている。 「…祥吾さん、元気ないね」 葵はカウンターを振り返る。 「まだ怪我が痛むのかな??」 「静かで何よりです」 口元だけで笑い、要はティーカップを置いた。 口元は笑っているのに、眼鏡の奥にある目は笑っていない。 多分、要は祥吾が仕事に関わらない理由を知っているか、気づいているのかもしれない。 葵は何も言わずにカップを手にとった。 人間関係って現世だけでも色々ある。 そこに前世においての人間関係が絡んでくると更に複雑になる。 現に葵はまだ祥吾と以前のように話せない。 前世にあったことを今になって責めることは間違っている。 わかっていても、前世の記憶、その意識がどうしても拭えない。 愛情も、憎しみも、悲しみも、記憶と共に連鎖する。 身を以て、良く知った。 沢山悩んで、沢山傷ついて、それでも互いを信じる強さがないと、前世を共有する仲間は一緒にはいられない。 その強さが欲しい。
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