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墓場の傍らに焚き火を作り、それを囲む。男が育てた茶葉で淹れた茶を渡すと、少女は赤くした鼻をちょっとこすってから受け取り、礼を言った。
「風邪か?」
「ううん。……なんで?」
「鼻を気にしている様子だからだ」
「ああ……それね。ほら、寒いとさ、鼻から出てくるじゃない?」
「鼻水がか? まあ、確かに」
「おじいちゃん、あたし、鼻水って単語口にするのはちょっとなあって思ってぼかしてたから、そこは乗ってほしかったなあ」
「……それは、すまない」
「いいって、いいって。謝ることじゃないし、謝られることじゃない」
梅子はくすくす笑い、茶に口をつける。「おいしい」と小声で呟いた。
「寒いなら、家の中に行くか?」
「おじいちゃんの家って隙間風吹き込みまくりで、そのうち風に負けちゃいそうなあの家でしょ? ここでいいよ」
「そうか。……今日は、何しにここに来たんだ」
「いろいろと。おじいちゃんはどう、調子は?」
「特に変わりはない」
「そう、よかった」
少女は荷物の中身を器用に片手で探り始める。そこから薄い本を一冊、引っ張り出した。
「ほい、これ」
「これは?」
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