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「集落に暮らしているのだろう? 他にも老人の知り合いくらいいるんじゃないか」
「そうだけどー、おじいちゃんがあたしの知ってる中で一番の年上っぽいんだもん。昔のこと知りたいなら、一番年上の人のところに一番に訊きにいくのが効率的ってもんじゃない?」
「……そうだな」
老人は、いまだ一度も梅子に口で勝てたことがない。いつも彼女に言い負かされ、丸め込まれてしまう。
「でしょー? だからいろいろ聞かせてよ」
「俺が話すようなことは何もない」
「なんでよー、もう、ノリが悪いんだから。じゃあ、話すようなことは何もないとか言っちゃうわけを話してよ」
「……つまらない話だぞ」
「別にいいし。それよりおじいちゃんの話が聞きたいだけだし? ねー、小吉も訊きたいよねー?」
梅子はすっかりすねてしまった様子だ。隣でくつろぐ小吉に寄りかかって声をかける。寄りかかられている小吉は、もうすっかり慣れているのか、嫌そうな顔すらしない。ぱたぱたと愛想笑いみたいに尾を振るだけだ。
梅子はいったんこうなるとしつこく、老人が折れるまでひたすら同じ質問をしてくる。答えるしかないようだ。
「……楽しい話では決してないぞ」
「うん、いいし。それより教えてくれるの?」
「ああ。
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