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「――ほんで、その人との交際は、ほんまに楽しくて幸せやったんや。カフェに行ったり、レストランに行ったり、美術館に行ったり、映画館に行ったり。一緒にいると安心して落ち着くし、このまま、ずっと一緒にいたいて思うてた」
香織は、ガラスのコップを両手で包むように持ってつぶやく。
コップの中の氷が解けて、カラン、と音がした。
「せやけど、私……ほんまに酷いことをしてしもて」
そう言って、目を潤ませた香織に、葵は「えっ」と眉根を寄せる。
「酷いことって?」
それまで黙って聞いていた葵が口を開くと、香織は俯き、手を震わせた。
「円山公園に、行ったんや。その日は、嘘みたいにひと気がなくて……」
香織は、ハンカチを取り出して、鼻を押さえた。
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