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「あの頃に戻ると嬉しいんですか?」
「はい」
離れたことで、私にとってホームズさんと一緒にここで働いていた時間が、かけがえのないものだったということを痛感したのだ。
あの時間が自分にとって、どれだけ尊く、愛しかったものなのか……。
期間限定でも、ホームズさんが『蔵』に帰ってきてくれたことが嬉しい。
久しぶりに、カフェオレを飲みたいと思った。
「僕は違いますね」
「えっ?」
「僕にとっては、あの頃よりも、あなたと想いを結べている今の方がずっと嬉しいですよ。むしろ、あの頃の僕に自慢したいくらいです」
ホームズさんは、さらりとそんなことを言い、
「それでは、久々にカフェオレを淹れますね。できるだけ、あの頃の僕よりも、美味しいカフェオレを淹れたいと思います」
蠱惑的な笑みを浮かべながら、口許に人差し指を立てる。
「っ!」
――それは、『蔵』にホームズさんが帰って来てくれた、嬉しい午後。
序章
~fin~
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