序 章

25/25
9660人が本棚に入れています
本棚に追加
/159ページ
「あの頃に戻ると嬉しいんですか?」 「はい」 離れたことで、私にとってホームズさんと一緒にここで働いていた時間が、かけがえのないものだったということを痛感したのだ。 あの時間が自分にとって、どれだけ尊く、愛しかったものなのか……。 期間限定でも、ホームズさんが『蔵』に帰ってきてくれたことが嬉しい。 久しぶりに、カフェオレを飲みたいと思った。 「僕は違いますね」 「えっ?」 「僕にとっては、あの頃よりも、あなたと想いを結べている今の方がずっと嬉しいですよ。むしろ、あの頃の僕に自慢したいくらいです」 ホームズさんは、さらりとそんなことを言い、 「それでは、久々にカフェオレを淹れますね。できるだけ、あの頃の僕よりも、美味しいカフェオレを淹れたいと思います」 蠱惑的な笑みを浮かべながら、口許に人差し指を立てる。 「っ!」 ――それは、『蔵』にホームズさんが帰って来てくれた、嬉しい午後。 序章 ~fin~
/159ページ

最初のコメントを投稿しよう!