序 章

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柿右衛門のページを開き、私は「やっぱり」と頷く。 「それは、マイセンのようですね」 そう言うと、円生と秋人さんは、ぽかんと口を開けた。 「これが、マイセンって本当かよ? だってそもそもがひょうたん型だぜ?」 信じられねぇ、と秋人さんが洩らし、円生も言葉こそ発しないが、同じことを思っているようだった。 私は、「ええと」と以前、ホームズさんが言っていたことを思い返す。 ――柿右衛門というのは、代々、有田の陶芸家、およびその後継者が襲名する名称なんです。その名の始まりは、十七世紀、有田――現在の佐賀県の窯元で、喜三右衛門という職人が、赤絵磁器の焼成に成功し、『柿右衛門』を名乗りました。  柿右衛門の装飾において傑出した品質は、西欧で高い評価を受け、十八世紀頃から硬質磁器で『柿右衛門様式』の模倣品が作られたのです。 フランスのシャンティイーやメルシー、イギリスのウースター、そしてドイツのマイセンでも――。 かつてホームズさんが教えてくれたことを伝えながら、私は資料を開いて円生に見せた。 そのページには、マイセンの柿右衛門様式が載っている。 柄こそ違っているが、同じひょうたん型であり、同じ様相だ。
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