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新たなる旅立ち
僕は水瀬に手配された特急の座席に座る。
山本姉さんと最後に話したかったな?
「すいません、奥の席なので失礼します!」
窓側に女性が座った。
ちょうど山本姉さんぐらいの背丈。
「大丈夫です。いまどきますよ?」
僕は彼女のために席をたち道をゆずる。
どれくらいたっただろうか、僕は暗澹たる気持ちのなかにいると、隣の彼女が話しかけてきた。
「ひょっとして、あなたも旅館にいくのですか?水瀬さんに手配されたのでしょ?」
「え、ええ、なぜそれを?」
僕は混乱した。
「立山グループの隠れ家といわれる立山荘に研修ですね。将来有望です!幹部候補生しかいかないところなのは、ご存知ですか?」
僕が知っているのはただのインビな館の旅館としての立山荘なんだけど。
彼女はわかっていない新入りに教えるかのように色々と説明する。
「経営者たるもの精神修養が大事だ。という社訓はご存知ですよね?旅館は山奥にあり、常識では考えられないことの連続が起きるそうです。都会ではありえないようなことが日常だと。そこを乗り越えたら立山グループの幹部候補生になれるのです。」
なるほど、そういうことなのか。そしてその非常識には乱交も入っている。というわけか。
「申し遅れました、私こう言う者です!」
彼女は立山グループの名刺を渡す。そこには十条良子という名前が印字されていた。
経営幹部候補生とある。ポニーテールの就活生姿の彼女は初々しい。
「あの?、あなたは?」
「立山。いいたくなかったけど、親父はグループの総帥だよ。」
僕は苦々しく名前を名乗る。
「なんだ、なら全部知っているんだ。」
十条良子は流し目で僕の方をちらっとみると。
「立山さん、夜が楽しみですね!」
と僕をからかう。
ああ、そうか。彼女も知っているのか。僕は少しだけ気が楽になった。騙されているわけではなさそうだ。
「そうだな。僕は好きな人とがよかったな……。」
山本姉さんは旅館にくるだろうか?いや、いたら逆に気まずいな。
「水瀬さんが後継者だろ僕はお役ごめんかな?って思っていたんだ。幹部候補か。親父の考えることはよくわからないよ。」
僕は少しだけ笑った。
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