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〝すみません。聞いても良いか迷ったのですが、失礼を承知で尋ねさせて頂きます。お気を悪くさせてしまったら本当にすみません〟
ワンクッション置き、続く文字に肩が跳ねる。心を読まれた気がし、冷や汗が流れた。
〝もしかして、何か理由があるのですか?〟
図星だ。珍しく踏み込んできた、SIOの言葉が心に染みる。ごく普通の返事をした積もりだったが、何かを汲み取ったのかもしれない。
〝何もないよ。ただ〟
打ち込んで――消した。
最後の最後、嘘を吐いて終わるのは嫌だと思った。それこそ心残りになってしまいそうだ。
それならば、真実を告げた上で終わるのも有りなのではないだろうか。
〝驚かないで聞いて。僕は昔、事故で顔面を損傷して酷い顔をしているんだ。それこそ化物みたいな。だからSIOには会えないんだ。幻滅されたり、怖がられたりしたくないから〟
本音を全て込めて練り上げた。送信を躊躇ったが、意を決して送った。今度こそ終わりを悟った。
けれど、先のような苦さはなかった。
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