視線

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視線

 打ち合わせ段階で、実は地元の人だったと分かった。世界は狭いものだと笑いが零れたほどだ。  と言う経緯もあり、一週間後、二駅向こうの公園で待ち合わせることになった。忙しい時期らしく、一時間程度しか会えないそうだ。  だが、それで十分だった。  正直、家中を歩き回ってしまうほど緊張していたが。  マスクに帽子、サングラスと身支度は完璧だ。外を歩く恐怖は拭えないが、鏡で外装を確認し何とか紛らわせる。幸い今は春先で、服装としての違和感はなかった。  人目を気にし、人口密度の低い場所を選んで通った。傍から見れば危険人物かもしれないが、気にしていられなかった。  ただ、一目会う為、ひたすら努力した。  そうして辿り着いた先、待ち合わせ場所である青いベンチを探した。この公園には何色かのベンチが設置されているのだ。  公園は、閑散としていた。  見回すと、直ぐに青いベンチを見つけた。そして、そこに座っている人も見つける。  居たのは、整った顔立ちの青年だった。
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