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誰もいないことを軽く確認し、装備を外した。外で素顔を晒すのは事故以来だ。
冷たい風が、やたらと攻撃的に感じる。隠してしまいたいとの感情が、外したマスクを強く握らせた。
揺れていた指先が、頬を撫でる。顔の場所を把握したのだろう、手の平が頬に被さった。
とても温かな手の平だった。
記憶するように、確かめるように、優しい指先は顔面をなぞる。壊れた骨格も鼻筋も全て。
「……会えて良かった」
「……僕もだよ」
SIOの中の僕は、本物より幾分良くなっているかもしれない。それでも、受け容れられて嬉しかった。
「キオさん。私、見えてても同じ事を言いましたよ。信じて貰えないかもしれないけど」
敢えて切り出され、少し笑ってしまった。相変わらず彼は純粋で優しい。
「いや、信じるよ」
それに、建前でも良かった。笑顔でそう言ってくれる存在がいるだけで、そう分かっただけで救いになる。
「……ありがとう」
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