世界

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 同じ趣味や考え方の人を探し、その人達の書き込んだものを見たり、書き込みに反応して話をしたりする。  そんなサービスを使い始めて、もう何年かになる。  毎日毎日、何時間も熱中した。キオと言う名を使い、世界に紛れ込んだ。  素性の露見を恐れ、書き込み行為は殆どしなかったが、それなりに満喫している。  顔の見えない世界だからこそ得られる楽しさだ。  もちろん、デメリットも存在するが。  そんな世界で、僕は一人のユーザーに惹かれていた。  名前はSIO。性別不明で、アイコンは愛犬のラブラドールレトリバーだ。  SIOは優しい人なのだろう。書き込む内容はいつも純粋で、輝きに満ち溢れていた。  自然の美しさや映画の見所など、視覚に映した小さな感動を切り取っては語っていた。  そんなSIOに、僕は憧れを抱いていた。  部屋で画面ばかりを見続ける僕にとって、SIOの言葉は眩しかった。  そんなSIOと僕は、SNSの世界では仲が良い。気付けば毎日会話するようになっており、それが生き甲斐だと感じるまでになっていた。  もちろん、そんなことは言えないが。
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