5人が本棚に入れています
本棚に追加
最後
驚きすぎて、返事が出せなかった。SIOに何があったのだろう。
このような事は、大して珍しくない。環境や心境の変化で突然消える人もいるくらいだ。
――しかし、これでは懸念が本物になってしまう。依存している僕は違っても、SIOはきっと僕を忘れてしまうだろう。
そんなのは嫌だ。強く思った。
けれど、SIOの中に残る術など無いのだ。
こういう時、現実世界で生きていくべきだと感じる。しかし、僕は現実が怖い。
顔を曝け出したら、怪人を見るかのように人々は僕を見下げるだろう。
そんな空間に立ちたくはない。
でも、もしその中で誰かが手を差し伸べてくれたなら、僕は少しでも前を向けるのだろうか。
なんて、こんな顔じゃ受け入れられるはずがないのにね。
携帯から、軽快な音が鳴った。通知音だ。
どこからの物かは分からない。大半がメルマガである事は確かだが。
しかし、内容は問わず、普段から全てに目を通していた。暇だからこそ成せる業だ。
電源を入れると、通知の内容が表示されていた。発信元はSNSのようだ。SIOとDMの文字が視界を掠める。
慌ててスクロールし、アプリをタップした。
SIOから、個人宛にメッセージを送ってくるなんて。内容が想像出来ない。
緊張しつつページを開く。すると、そこには二つの文が並んでいた。
〝こんばんは。SIOです。突然のDMごめんなさい。一週間後ここから去ることになりました。突然で申し訳ないのですが、最後にお願いしたいことがあってDMしました。〟
食い入るように文字を追う。そうして全て読み切った時、息が詰まる感覚を覚えた。
〝一度だけ、私と会って頂けませんか?〟
最初のコメントを投稿しよう!