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文字だけが脳を支配している。他の景色はぼやけ、背景として溶けた。
大勢の中から選んでくれたことは、素直に嬉しい。
しかし、答えはノーだ。会える訳がない。結果は目に見えている。
だから、悲しいけれど断るしかない。
〝こんばんは。DMありがとう。話せなくなってしまうのとても寂しいです。でもごめんなさい。どうしても無理なんです。本当にごめんなさい。〟
送信ボタンに指を翳す。送ってしまえば最後、関係は終わる。
SIOが去るまで連日話したとしても、それが何かを残す事はないだろう。
本当にそれでいいのだろうか。後悔はしないだろうか。
いや、するだろう。けれど、会って嫌われてしまった方が強く後悔するはずだ。
そう考えると、会わない方が賢明だと思ってしまう。
そうして何も変えないまま、文字の世界に入り浸っていた方が傷付かないと――。
未送信のまま、画面を閉じた。遣り切れない感情を乗せ、携帯をソファに投げる。
空いた手で、顔面をなぞってみた。明らかに普通の人間とは違う。骨格も鼻筋も、左右だって非対称で。
〝一度だけ、私と会って頂けませんか?〟
言葉を思い出す。純粋で優しいSIOなら、この顔を受け容れてくれないだろうか。
顔なんか二の次だと言ってくれないだろうか。
淡い希望を抱いては、壊される事を恐れ葬る。だが、浮かんできては都合の良い未来を見せてくる。
一度でいい。僕もSIOに会いたい。
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