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「分かった」
かなり不安を感じながらも、彼に背を向ける。
「愛実って髪、キレイだよね」
最初は頭を撫でられた。
あっ、コレは平気。逆に気持ち良いかも。
「どっどうも」
「やっぱり手入れには気を使ってる?」
「そりゃあ高校生だもの。みがかないと勿体無いでしょ?」
「あはは。そうだね」
彼の手が髪の束を掴む。
…うん、コレも大丈夫。
そう思っていたら、ガバッといきなり抱きつかれた!
途端に全身から汗がどばっと出てきた。
気を失いそうになるも、彼が後ろから支えるので、倒れられない。
「ここで気を失ったら…大変なことになるよ?」
低くキレイな声で耳元に囁かれ、すぐに現実に戻る。
「うっウソツキ~! いきなりは止めてって言ったのに!」
力の限り暴れるも、彼は平然としている。
「ゴメンゴメン。何かガマンできなかった」
まっ間近で微笑まないで!
心臓が高鳴る。体が熱くなる…!
「―好きだよ、愛実」
耳にふき込まれた声が、全身を痺れさせる。
「ちょっと…!」
「可愛い反応♪ でもオレだけにしといてね? じゃないと愛実にちょっかい出すヤツ、殺しかねないから」
サーッと勢い良く、血の気が下がった。
ほっ本気だ! 顔を見なくても分かるぐらい、本気を感じ取れる!
「ねぇ、愛実は触られるのがイヤなんだよね?」
「そっそうよ」
今でも鳥肌が止まらず、貧血で倒れそうになるぐらい、苦手。
「じゃあ愛実から触るのは?」
「それは…大丈夫みたい」
自分からはあんまり触らないけどね。
「ふぅん。なら、今度は愛実からキスしてよ」
「はぁ? さっきしたでしょう?」
「実験実験。リハビリだってば」
理由になっていない…。
でもこの男は危険人物。何せ眼が笑っていない。
渋々顔だけ振り返り、そっと唇を合わせた。
「…どう?」
「言った通りよ」
大丈夫だったけど…さすがに恥ずかしい。
「まっ、ゆっくりいこうか」
そう言いつつもまだ解放してくれない。
やっぱり荒治療だと思いつつも、この腕の中にいることがイヤではないと思えた。
<終わり>
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