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まさかそんな風に思われてたとは。異性とメールのやり取りなんてほとんどしたことが無かった恵は、全てのメールに悩んで返信をしていた。そんな努力を否定されたみたいで、とても悲しい気持ちになった。隆とはこれまでに一度も体の関係こそ無かったが、半年間の交際を経てそろそろ身を任せてもいいかな、と考えていた矢先だった。
「そんな…酷いよ」
「うるせえ、酷いのはどっちだよ」
「だから誤解だってば…私、男友達だっていないんだから」
「まだ白を切るつもりかよ。もういい、お前とは口も聞きたくない」
「白を切るだなんて…そうだ」
ふと恵は思いついた。何を言っても、このままではまともに話も出来ない。ポケットから携帯電話を取り出し、操作をして画面を隆に向けた。
「見て、私のメールの受信履歴。隆からばっかりだよ。ほら、送信履歴も、着信履歴も。隆以外の人と連絡なんてとってないよ」
恵が見せた画面には、履歴がどれも「タカシ」だった。時折「お母さん」や「お姉ちゃん」という名前も表示されていたが、それ以外の登録者は画面に現れなかった。
隆はちらりと画面に目をやったものの、すぐに違う方向を向いた。そして一言、「履歴の削除とかしてんじゃねえの」と呟いた。
「私、そんなことしてないよ。信じて」
「信じられるかよ。もういい、どっか行け」
恵は涙を堪えるのに必死だった。隆が見たと言う私はきっと他人の空似だろう。けれど、すっかり隆は勘違いをしている。早く誤解を解かないと、最悪破局までありえるのでは。そう考えると、一気に不安になる。
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