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そのとき、俺は腕を掴まれた。一瞬何か分からなかったが、振り返るとそれは渚だった。 「何してんのよ……」 渚は強張った表情で俺を睨みつけた。 「お願いだからバカなマネはやめてちょうだい……」 そして、ゆっくりと握力を強めていった。腕を握り締められて、俺の中の衝動は徐々に冷めていった。だが、未来への不安が収まったわけではなかった。 「じゃあ……渚ならどうする?」 俺は静かに渚の腕を解きながら、ゆっくりと口を開いた。 「自分の意思とは関係なしに、たくさんの人を傷付けて、悲しませて……それがいつかは分からないけど、そういう日が来るかもしれないって分かったとき……渚はどうする?」 それを聞いて渚は少し戸惑っていたが、すぐに首を振った。 「でも、いまのあなたはあなたでしょ?……どこも体に悪いところなくて、私と普通に話せてるじゃない……なのになんで死ななきゃ……」 「渚」 俺は彼女の名前を呼んだ。必死に理由を探してくれるのは嬉しい。でも、その答えはもうすでに出ているのだ。だから、俺は止めどない"なんで"を求める渚を無理やり止め、ただある事実を告げた。
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