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100年以上前、人工知能に関する研究は最盛期を迎え、ロボットは見た目も中身もヒトと変わらないところまで近付いていた。人間とロボットの共生はとっくの昔に果たされて、もはやそれが当たり前の世の中になっていた。
ただ、政府はずっとあることを懸念していた。それは人工知能が人間を超えてしまうのではないか……という1点だった。
そこで生み出されたのが"予防接種"である。これによって、人間でいうところの神経細胞の働きを鈍くし、人間でいうところの脳の働きを悪くするのだ。だから、病気を予防するのではない。簡単に言えば、俺たちロボットが人間より先に行くことを予防するためのものだった。
年に1回接種することで人間と同等のスピードで知能が発達していく……そういう画期的な代物のはずだった。
しかし、この予防接種には副作用があった。
原因は分からないが、本来知能の発達を遅めるためのものが、逆に速めるように働くといったものである。もちろん、ロボットの人工知能が発達したところで人類の破滅が必ずやって来るわけではない。いい方向に働く場合だって十分に考えられる。
だが……コトが起こってからでは遅い。
そのため、万一副作用が確認された場合はそのロボットを直ちに処分すると、政府はあらかじめ法律で定めていたのだった。
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