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「渚、好きだ」
ポツリと言った。それは前から思っていたことで、日に日に強くなっていった俺の気持ちだ。とにかく言葉にしたかった。いま、本人がいる目の前で。でないと永遠に出て来なそうだった。
「なんで?」
すると、渚は悲しい顔でこちらに問いかけてきた。理由を聞かれて俺は困った。
「なんでって……」
渚は知りたいらしい。
俺が彼女を好きである理由を。
「えっと、そうだな……」
俺は言いたいことを素早く整理した。
「渚は目がクリンとしてて人形みたいだし、髪もサラサラしてて綺麗だ……あ、容姿だけじゃないぞ? 一緒にいて楽しい。いつも俺の話を最後まで聞いてくれるし……」
「そうじゃなくて……」
理由はまだあった。だが、何故か渚は俺の話を遮ってきた。
「なんでいまなの……?」
渚は言い終わると同時に、目から大粒の涙を流した。そう言われて、俺は辺りをもう一度見回した。
俺の体の至る所から管が伸びている。管の中では液体が行ったり来たり。自分の体の中にあったものが出て行くのか、外から何かを入れられているのか……いちいち考えるのも面倒なほど夥しい数の管が俺から伸びていた。
「しゃあねーよ、こればっかりは」
俺はまたポツリと呟いた。見ると、渚はまだ泣いていた。
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